舞踊
歌や踊りなど、喜びや悲しみを体で表現することはアイヌの生活に欠かせないものでした。儀式の時や、親戚・友人が集まった時、あるいは仕事をしている最中など、さまざまな場面で人々は歌い、踊りました。アイヌの舞踊とは、自分たちが踊って楽しむだけでなく、祖先や神々に対して敬意や感謝を表す表現でもあります。これらの踊りは地域によってリムセやウポポ、ホリッパといわれ、大勢で輪になって踊るものや、少人数で神々への祈りを表したもの、豊漁猟を祈願するもの、悪霊を追い払うためのもの、働いている様子を表したものなど、さまざまな種類があります。また、これらの踊りの多くは楽器を使わず、参加している人たちの歌と手拍子だけで踊られていました。
トンコリ
トンコリは、おもにサハリン(樺太)地方のアイヌが使用した、琴にやや似た弦楽器です。演奏の際には、胴体を抱きかかえるようにして持ち、弦を押さえずに指ではじくように弾きます。胴体は長さ70~150㎝、幅15㎝ほどで、一本の木をくり抜いて作ります。おもにイチイ(オンコ)やエゾマツなどが使われました。弦の数は5本のほか、3本や6本のものなど様々です。エゾイラクサの繊維を固く撚ったものや、クジラやシカ、トナカイの腱などが弦の材料となりました。
ムックリ
ムックリは古くからアイヌ社会に伝わる竹製の楽器で、「口琴」や「口琵琶」などとも呼ばれます。長さ10~15㎝、幅1㎝ほどに薄く削った竹の中央が舌状にくり抜かれ、左右に糸が付けられています。輪になった糸を小指に掛け、竹の細い部分を口に当てながら、もう一方の糸を引くことによって、中央部分が振動して音が出ます。糸を引く力の強弱に加え、口を閉じたり開いたりすることにより、いろいろな音色が出ます。同じような楽器が、台湾や北方圏など世界各地に存在します。