• [生活] 森と湖に抱かれたコタンの生活
  • [芸能] 神々と共に踊る、歌う
  • [口承文学] ユーカラ(サコロペ)はアイヌ特有の文学
  • [伝承・祭礼] 神々に感謝を捧げる
  • [衣服・文様] 文様に想いを込める
  • [継承文化] 時を超え現代へと紡ぐ

アイヌ文化遺産情報発信の館 阿寒湖温泉歴史文化交流ゾーン <イコロ>

[伝承・祭礼] 神々に感謝を捧げる

神々と共に生きる

アイヌは、あらゆるものに精神が宿ると考え、山や湖などの自然をはじめ、自分たちに恵みをを与えてくれる様々な動植物などを神(カムイ)としてあがめました。また、病気や天災(雷、強風、飢饉)など、自分たちの手に負えないような強い力を持つものも神とみなしました。

神々は、カムイモシ(神の世界)からそれぞれの役割をもってアイヌモシ(人間の世界)に降りてきて、役割を終えると再び神の世界に戻ると考えられていました。

また、精神の良い立派な人間のところには、クマ神をはじめとする位の高い神々がたくさんのプレゼント(毛皮や肉など)を身にまとって遊びに来てくれるので、心がけよく暮らさなければならないのだと考えました。

イクパスイとトゥキ(杯) 神々に祈る際に用いられます。イクパスイは人間の祈り言葉を神々に伝える役目をもちます。(※阿寒湖アイヌ生活記念館 所蔵)

これらの神々は、逆らうことのできない絶対的な存在ではありませんでした。天災や病気の神々などが不当な行いをした時、あるいは神々が人間を守護することを怠った時には、抗議の祈りも行なわれました。

左上/パウンペ(冠):儀式などのときにかぶる冠で、一本の柳の木から作られます。 右下/イナウ:イナウは、アイヌ文化独自の信仰の中から生まれその精神文化を象徴するもののひとつです。イナウは、きちんとした神祭りをする時には無くてはならない大切な祭具です。又、家を守護する神、病気を避ける神、狩猟を司る神なども造り宝壇などを飾る役目もします。(※阿寒湖アイヌ生活記念館 所蔵)

神々に感謝し平和な暮らしを願う「カムイノミ

カムイノミ

神々に祈りを捧げる儀式をカムイノミといいます。アイヌは、事あるごとにカムイノミを行ないますが、どの神に祈る場合も、まずアペフチカムイと呼ばれる火の神に、それらの祈りが正しく目的の神に届くように祈願します。アペフチカムイは、チセの中央に設けられた炉に鎮座し、アイヌの暮らしを温かく見守る、最も重要で身近な神とされています。

カムイノミを行なう際には、ヤナギなどで作られたイナウと呼ばれる木幣を使用しました。

神々から守護され、食料や道具材の提供があってはじめて、平和で安定した暮らしを営むことができると考えたアイヌは、神々からの日々の恵みに感謝を捧げるとともに、将来にわたって幸福な生活が続くことを祈願したのです。

カムイノミ

クマの木彫り

霊を送る

アイヌ社会で広く行なわれてきたイオマンテは、「クマ祭り」として知られています。

これは、毛皮や肉などをアイヌに届ける役割を持ってアイヌモシ(人間世界)を訪ねてくれたクマ神の霊を、カムイモシ(神の世界)へと送り帰すための儀礼です。したがって、正確には「クマの霊送り」というべきものです。

霊を送るにあたっては、何日もかけて酒や団子を作って準備をします。儀礼では、厳粛なカムイノミとともに、歌や踊り、ユーカラサコ)などでクマの霊をもてなします。饗宴や捧げものによって人間界の楽しさや豊かさを示した後、道標としての矢を東の方角に放ち、クマの霊を送り帰します。

丁重な儀礼とともに神の霊を元の世界へ送り帰すことは、人間世界への再訪を神々にうながすためにとても大切なことでした。